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4日目、⑦南彦根駅へ向かう [琵琶湖てくてく物語]

「庭が出来上がるまで生きてるかしら?」
妻は時々嫌味な事を言う。
確かに、還暦を過ぎて始めるにはちょっと時間が足りないのかもしれない。
父が亡くなったのは私の今の歳である。先年亡くなった母は、畑に白菜やダイコンを植えて収穫を楽しみにしながらも突然逝った。元気すぎるほどだったが、あっけなかった。
ふと考えた。今まで気づかなかったが、我が一族で、私が一番年長になっていた。順番で言えば、次は自分の番なんだな。
「いつ死ぬかなんて、誰にも判らない。今日かもしれないし、明日かもしれない。案外、100歳まで生きるかも。そんなことを考えていたら、何もできない。そう思うなら、一緒に作業してくれないかな。」
と心の中で呟きながら、妻の嫌味な言葉を笑顔で聞き流している。
庭づくりの方は、また別の機会に書かせていただきたい。

歩みは真っ直ぐだが、話は道を逸れてしまった。
本論に戻る。
前方に高い建物がある。彦根市立病院だ。屋上にヘリポート。立派なランドマークだ。
さて、ここで迷った。
この先、湖岸を進むか、ここをゴールにするか。
このまま行くと、JRの最寄り駅がどんどん遠ざかる。最寄り駅は、南彦根駅、次は川瀬駅だ。後の行程を考えながら、ここをゴールとするか、もう少し進むか。
結局、この犬上川の畔を本日のゴール(次回の出発地)とした。
さあ、駅に向かおう。
ここから、南彦根駅までは一直線の道。くすのき通りというらしい。
彦根市民病院前を通過し、先般書いた、「庄堺公園」の横を通り、とにかく真っ直ぐに進む。閑静な住宅街が続く。戸賀町西の信号までが住宅地だった。
そこを過ぎると、自動車販売店や携帯ショップ、ピザ屋等の店舗が並び始める。道路も片側2車線になり、駅が近い事を教えてくれる。
だが、ここが、実に長かった。店舗が並ぶ通りは退屈しないのだが、何だか進んでいる気にならない。不思議な感覚だった。久しぶりに見る大きな建物のせいなのか、自分の存在が小さく小さく感じた。
高島に移住して、高層階の建物はほとんど見ていなかったせいもあるかもしれないが、大型のショッピングセンターや高層マンションが立ち並ぶような場所にいると、自分が地の底を這っているような感覚になる。
40年ほど前に、山口の田舎(本当に田舎で山一つ越えてようやく小さな町があるようなところで、バスが1日数本程度、鉄道なんてなかったし、集落に一つあったよろずやがライフラインだった。)から名古屋に出た時、名古屋駅前のビル群を見上げて、とんでもない所に来てしまったという思い出がある。人の多さ、車の多さ、鉄道やバスの多さに圧倒され、自分という存在がとてもちっぽけなものに感じた。
琵琶湖を回ってきた中で、初めてというべき「街」についた感じがした。
彦根城や長浜城、安土城など、見上げるような高さの天守閣は、当時の人々にとっては驚くべき存在だったに違いない。そして、それは、城主への畏怖となり服従せざるを得ない環境を作り出したのではないだろうか。
東京のビル群で働くエリートたちも、そういう大きな存在に身を置くことで自分の力を過信するほどの心理的トリックにおどらされていはしまいか。

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