SSブログ

11日目⑤北小松水泳場 [琵琶湖てくてく物語]

北小松の湖畔を歩く。
鮎料理松水の横を通り過ぎる。松水の建物の壁に、味わい深いイラストと文字。
「はじめて食べた鮎の味。思い出すあの頃と、あの笑顔」
鮎になじみがない私でも、こういう表現には何かほっとさせられる。
海のそばで育った私には、そういう味というと、漁師だった父が『タテアミ漁』で獲ってきた魚を市場に出荷した後に残る「雑魚」ということになるかもしれない。
「雑魚」は、市場価値がない魚で、名前もわからないような雑多な種類が混ざっていた。
母はそれを甘辛く醤油で煮つけ、鍋ごとテーブルに運んできた。それを家族でつつくように食べた。おいしいかどうかよりも、腹を満たせるかどうかが重要な頃だった。ただ、「雑魚」は小骨が多いものばかりで、幾度ものどに骨をひっかけて大騒ぎになった。そのたびに、ご飯を丸呑みする。骨が取れると、家族みんなで安堵して笑った。貧しかった時代だが、楽しい時代でもあった。そんなことを思い出した。
その建物の反対側、湖畔に、芝生の広場とテーブル席。いくつもの柱が建っているので、おそらく、夏の水泳シーズンには休憩所になるのだろう。その先、湖に突き出た桟橋があった。なかなかの風景だった。
そこを通り過ぎて、不思議な場所を見つけた。
通り沿いは板塀が続き、真ん中あたりに立派な門がある。門の軒先には菊の御紋がついている。門の隙間から中をのぞくと、鳥居が建っていた。明らかに神社だった場所と思われるが、社殿はなく、空き地になっている。北の隅に、小さな社の屋根が板塀越しに見えた。但し書きも何もないので、何なのか全くわからない。空地の状態を見る限り、火事で焼失したとも思えない。GoogleMapを見ても何も書かれていない。御存知の方があれば是非お教え願いたい。
謎の場所を過ぎると、小松浜水泳場。湖沿いに「海の家」ならぬ「湖の家」が建っている。夏になると、賑わうのだろう。
さて、ここからは遮るものが何もない湖岸の道路を歩く。
アスファルト舗装はされているが、ぎりぎりに道路があるため、ちょっとハンドルを誤ると湖に落ちてしまうにちがいない。
遥か前方に、白髭神社らしきものが見えてきた。いや、まだまだ遠い。この辺りは別荘地ではなく、古くからの集落だ。大きな家が並んでいる。
この辺りは、国道161号線の高架化の工事が進んでいる。
先ほどのメガソーラー発電所までは、山間を抜けるバイパスが整備されたが、北小松はまだできていない。そのために、休日でなくとも、渋滞が発生しやすい場所だ。車に乗っている者には、厄介なところなのだが、見方を変えれば、住民からすれば、絶えず車が渋滞し、騒音と排煙に苦しんでいることになる場所で、高架化することでおそらく暮らしは一変するだろう。その高架化の中で、実に面白い風景が生まれている。
北小松にある「樹下神社(金刀比羅宮)」の参道を横切る形で高架橋が通っているのだ。まだ完成はしていないが、入口の鳥居と境内(社)の間に高架道路が走るようになっている。まだ、橋げたはできておらず、橋脚だけが並んでいるため、ちょっとわかりづらい。
完成すると、どんな風に見えるか。今は、鳥居から社がまっすぐに見えていて厳かな雰囲気を感じられるが、道路が完成すると、参道が分断されるように見えるはずだ。
信心深い者には、ショックな光景ではないだろうか。
ただ、先ほども書いたように、ここ北小松の住民にとって常に渋滞している道路が高架になれば、日常の暮らしはきっと静かなものになるに違いない。そのために、神の御力(社殿)を使わせていただくということで納得しているのかもしれない。
ひょっとしたら、とても変わった風景ということで、写真マニアとか神社マニアの参拝が増えるかもしれない。

nice!(5)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー