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4-10 シンクロ [アストラルコントロール]

山崎とのやり取りの後、すぐに、生方から連絡が入った。
「剣崎さん、五十嵐さんが見つかりました。」
「どこ?スパイダーも一緒なの?」と剣崎。
「射場零士のアパートの前で見つかりました。近所の方が救急に連絡したようです。今、市立病院に搬送されています。」
「無事なの?」
「詳しくはわかりませんが、意識がない状態で部屋の前に倒れていたらしいんですが、詳しくは判りません。」
「そう。判ったわ。すぐに病院へ行くわ。」
剣崎は皆を見た。それから、「カルロス!トレーラーを病院へ!」と叫んだ。
ほんの数分でトレーラーは病院に着き、剣崎とレイは、五十嵐が運ばれた救急病棟へ向かった。
山崎刑事も姿を見せていた。
「命には別条はないようだが、意識が戻らないようだ。」
現れた剣崎とレイに山崎が説明した。
検査を終えベッドに横たわった五十嵐が処置室から出て、病室へ運ばれていく。
「剣崎さん、彼女にシンクロします。」
レイが剣崎に言った。
それを聞いた山崎が、「どういうことだ?」と剣崎に訊く。
「五十嵐さんの意識の中に入るということです。彼女はその能力を持っていますから・・。」
剣崎が説明した。山崎は困惑した顔をしたまま、レイを見ていた。
レイが静かに目を閉じる。剣崎がそっとレイの手を握る。こうすることで、レイと繋がり、五十嵐の思念波を共有することができる。1分、2分、それはかなり長い時間に感じられた。
ふうと息を吐き出し、レイが目を開けた。剣崎も目を開けた。
「射場さんは完全にスパイダーに支配されているようですね。」
レイが口を開く。
「なあ、五十嵐の意識は戻るのか?」
山崎が不安そうに訊く。
「ええ、もうすぐ意識が戻るはずです。かなりダメージは受けているようですが、しっかりとした思念波を感じることができました。ただ、しばらくはそっとしておいた方が良いでしょう。」
レイが答えると、山崎がさらに訊いた。
「自刃した事件のことだが・・やはり、その・・スパイダーとやらが関わっているのか?」
「ええ、間違いないでしょう。」と剣崎が答えた。
「まだ同じようなことが起きるのか?」
「おそらく、スパイダーを止めない限り、もっと悲惨な事件が起きるはずです。」
剣崎が答えると、さらに山崎が訊く。
「俺たちにできることはないのか?」
剣崎が少し考えてから答える。
「スパイダーが操って、自殺させた人物は、いずれも、不起訴になった人物ですよね。それも、山崎さんたちが関わって立件した事件のようです。過去の事件を調べれば、ある程度、対象は絞れるかもしれません。・・ああ、それと、射場さんがフリーの記者として関わってきた事件も大きく関係しているはずです。五十嵐さんの意識にシンクロして、彼のアパートで、なにか調べている様子が残っていました。」
「そこまでわかるのか?」と山崎。
「ただ、決して、気づかれないように動いてください。もしかすると、あなたたちもコントロールされる危険性があります。・・対象者を特定しても近づかないように。接触するようなことがあれば、それこそ、スパイダーの思惑通りになるはずです。山崎さん自身が対象者を殺してしまうように操られることも考えられます。」
「判った。とりあえず、過去の事件を調べてみよう。対象者をある程度特定できなければ、どうにもならない。何かわかったら、すぐに連絡するよ。」
山崎はそう言うと、病室を出て行った。
「大丈夫でしょうか?」
レイが呟く。
「どうかしら・・私たちは私たちの方法でスパイダーの居場所を突き止めましょう。」
剣崎はそう言って窓の外を見た。

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