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FINAL4 対決 [アストラルコントロール]

そう言った瞬間、マリアが伊尾木とともに強い思念波を発した。それは、小松原が立っている改札口一帯を取り囲むようなバリアを張った。
レイは精神を集中してスパイダーの思念波を捉えようとする。
小松原がナイフをぽとりと落とし、その場にうずくまった。
「今だ確保』
山崎の号令とともに、取り囲んでいた警官が一気に小松原に飛びつく。人質になっていた女性が解放され、すぐに救急車へ搬送された。
捉えられた小松原は、口から泡を吹き気絶していた。数人の警官に抱きかかえられるようにして、小松原も運ばれていった。
「レイさん!」
剣崎が叫ぶ。レイは目を閉じ、精神を集中してスパイダーの居場所を探す。
「あのビル!あのビルにいます!」
そう言ったと同時に、思念波の強い光の矢が、指さしたビルからレイたちを目指して飛んできた。
『いかん』
マリアの体から、伊尾木の思念波の光の塊が飛び出し、向かってくる光の矢と衝突した。二つの光は、大きく弾け、飛んでいく。
そのすきに、剣崎がビルへ向かっていく。
再び、強い光の矢が飛んでくる。伊尾木の光の玉が矢を防ぐ。マリアとレイもバリアを張って、周辺を守ろうとした。現場にいた山崎や警官たちは、目の前の広がる光景が何なのか、全くわからずただ身を低くして見守っている。
伊尾木の光の塊は、矢を防ぐたびに小さくなっていくのが判る。
「ダメ!」
マリアが叫ぶ。
次に光の塊が衝突すると、伊尾木の光がさらに小さくなり、点滅し始めた。
「おじさんが・・危ない・・。」
マリアは、咄嗟に動いて、点滅している光の塊を両手で包み込むと、胸の上に置き、自分の体の中へ入れた。
『ほう、やはり、お前がこいつの守護者か。だが、いつまで守れるかな?』
スパイダーが思念波という形で、皆に話しかける。
『止めなさい!これ以上、犠牲者を出さないで』
ビルに入り、スパイダーの居場所を捜していた剣崎は、ついに、屋上でその姿を見つけ、銃口を向けて叫んだ。
射場の体のスパイダーはゆっくりと振り返る。
「俺を撃てるのか?」
スパイダーは射場の体を乗っ取っている。射場を殺せば、スパイダーは体を失い浮遊することになる。長時間は持たない。だが、射場を殺すことはできない。
「どうする?こいつを殺したところで、俺は、ほかの人間に乗り移れば済むことだ。お前は俺には勝てない。これまで何人ものチェイサーに追われて来たが、俺は生き延びてきた。俺をしとめることができるのか?」
スパイダーは剣崎を挑発する。剣崎はかつてチェイサーだった。ただ、サイキックとしては強い能力を持っていなかったため、スパイダーのようなサイキックを倒すことはできなかった。いや、むしろ、剣崎はチェイサーたちにとっては、対象をおびき寄せるエサのような存在に過ぎなかった。
「うう・・」
剣崎は、銃口を向けたまま、動けなかった。
「射場さん!闘って!」
そう叫んだのは、五十嵐だった。
病院にいたはずの五十嵐は、駅の事件を知り、それが射場の体に乗り移ったスパーダーの仕業だと直ぐに判って、病院を抜けだしたのだった。
五十嵐の言葉で、スパイダー、いや射場に異変が起きた。
『なんだ!こいつ!・・。』
そう言うと、急に射場が床をのたうち回り始めた。明らかに射場とスパイダーが体の中で戦っていると判った。
「射場さん!戻ってきて!」
五十嵐は続けて叫ぶ。

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