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FINAL5 二つの光 [アストラルコントロール]

射場の体から大きな光の塊が飛び出してきた。
『ええい!どいつもこいつも、気に障る!罪人を制裁する大儀をまるで理解しない俗人どもめ。お前たちのような人間が、社会を腐らせているんだ。一気に粛清してやろう!』
「レイさんバリアを」
剣崎が叫ぶ。
レイは、とっさに皆を包み込むために思念波のバリアを作った。
『それで身を守れると思うか?』
スパイダーの光の塊はいったん大きくなった後、急激に小さく縮んでいく。いや、縮むというより、圧縮されているようで、光が徐々に強くなっていく。そして、空高く舞い上がると、一直線に、レイのバリアに凄まじいスピードで向かってきた。
レイは、ありったけの力を使って、強固なバリアを作った。
光の塊は、尖った矢のようになりバリアに突っ込んだ。周囲が真っ白になるほどの強い光。大きなフラッシュが大量に光ったような強い光、周囲にいた人たちは、その強い光とぶつかった時の衝撃波でなぎ倒された。
バリアの中にいた、人たちも凄まじい衝撃を体に受け、意識を失った。
レイも意識がもうろうとしてしまい、バリアが消えてしまった。
一気に拡散した光の塊は、徐々に集まり始める。
『思ったより強固なバリアだったな。だが、もう作れないだろう。』
スパイダーの光の塊は、再び大きくなり始める。
「レイさん!しっかりして!」
剣崎がレイに呼びかける。
「ごめんなさい・・もう、無理・・です・・。」
レイはかすかに聞こえるほどの声で答えたあと、目を閉じ、意識を失ってしまった。
『マリア、お前が、皆を守るんだ。』
伊尾木の思念波がマリアに話しかけた。
「はい。」
マリアはすっと立ち上がり、目の前で徐々に大きく力を蓄えようとしている光の塊に対峙した。
『お前のような子どもに何ができる?』
徐々に小さくなり強い光に放ち始めたスパイダーが、マリアに言う。
『マリア、力を解き放て』
伊尾木の言葉が後押しする。
マリアは目を閉じ、大きく両手を広げる。その指先から、細い光の糸が伸び始めた。その糸は、空中に浮かぶ、スパイダーの光の塊を包み込むように広がっていく。
『何をする気だ?』
そう、スパイダーの光の塊が言った時には、マリアの光の糸にすっかりと包まれてしまっていた。
マリアはゆっくりと両手を体の真ん中に持ってくる。それに合わせて、光の糸が繭のような形になり、スパイダーの光の塊をすっかりと包み込んだ。
『こんな小細工など通用しない!』
スパイダーは、マリアの作った思念波の繭の中で、光を強めて大きく広がろうとした。だが、そのエナジーは光の糸に吸収されるばかりだった。
『どういうことだ!』
さらに光を強めようとするが、全く通用しない。それどころか、光を強めようとすればするほど、取り巻いている光の糸がさらに太く強くなるばかりだった。
「抵抗しないで!このまま抵抗すれば、あなたは消滅してしまうわ。」
マリアがスパイダーに言った。
『判った・・許してくれ。・・』
スパイダーが改心したような言葉を発した。
『もう良いだろう。』
伊尾木がマリアに言うと、マリアはゆっくりと両手を広げた。繭状の光の糸は徐々に緩んで消えていく。真ん中には小さくなった光の塊があった。
『さあ、すべて話してもらおう。』
伊尾木が、スパイダーに思念波で語り掛けた。
『ああ、すべて話そう。』と、スパイダーは思念波で返答した。

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