SSブログ

FINAL2 最後の事件 [アストラルコントロール]

「誰かが射場さんを排除するために起こした事件ということかしら?」
レイが思い付いたように言った。
「そうか・・。そういうことなのね。・・射場さんが邪魔だった。だから排除するために事件を起こした。」
剣崎が確認するように言った。
「そうなると、小松原雄一の父親、県会議員の収賄は実際にあったということかしら?」
と、レイが言う。
「そのあたりを今、スパイダーが調べているということでしょうね。」と剣崎。
「でも、どうして?射場さんは完全に取り込まれ、意識はないはずです。なのに、射場さんの意思で動いているなんて・・ありえないでしょう?」
レイが疑問をぶつける。
『射場は取り込まれていないかもしれない。』
突然、伊尾木が思念波を送った。
「どうして?」と剣崎。
『射場の命を救うため、私が彼の思念波にシンクロしたのを覚えているだろう。かなり衰弱していたために、私が少し思念波を操作した。わずかだが、私の思念波を彼の中に残してしまった。スパイダーに取り込まれながら、そのことで部分的に射場の思念波がスパイダーに抵抗をしているのかもしれない。』
「スパイダーは、射場さんを取り込んだつもりでいるが、実は、射場さんに操られているかもしれないということ?」
レイが伊尾木に訊いた。
「でも、それなら、五十嵐さんを人質にしたり、身を隠したりしなくてもいいんじゃないの?」
剣崎も訊いた。
『初めはおそらく射場は完全に取り込まれ意識を失っていたんだろう。だが、徐々に立場が変わってきているのかもしれない。いずれにしても、スパイダーの居場所を突き止めるほか方法はない。』
「この小松原県会議員が鍵ね。まずは彼に接触しましょう。」
剣崎はそう言うと、小松原県会議員の自宅へ向かった。
小松原県会議員の自宅は、町の郊外にある高級住宅地のもっとも高台に建っていた。閑静な住宅街にトレーラーで乗り入れるのはさすがに目立つため、タクシーで乗り付けた。
「どう?レイさん、スパイダーの思念波を感じる?」
剣崎がレイに尋ねる。
「いえ、周囲には居ないようです。」
屋敷の入り口は、大きな石造りの門扉で閉ざされていた。あちこちに監視カメラがついている。周囲を歩いてみる。家をぐるりと取り囲むように、塀と生垣があり、中の様子は全くわからない。
剣崎のスマホが鳴った。
「生方です。小松原氏は、県外視察だったようですね。夕方には戻る予定で、今は、新幹線に乗車中です。」
「息子の雄一は?」
「父親の秘書として同行しています。」
「スパイダーの姿は?」
「新幹線の中には居ないようです。現在、駅周辺のカメラで監視しています。動きがあればお知らせします。」
電話を終えると剣崎が、レイに「駅へ行きましょう」と提案した。
二人はすぐに、新横浜駅へ向かうと、改札口が見える小さなカフェに入った。
周囲に、スパイダーの思念波がないかをレイはじっと探っていた。剣崎は、改札を通過していく乗降客を監視した。
「そろそろ到着する時間ね。」
剣崎は目を凝らして改札を見ていた。
「感じる!・・スパイダーの思念波・・かなり強い・・・・うう・・。」
レイが頭を抱えた。
「レイさん!シンクロしないで!危ないわ!」
そう言って剣崎がレイを見たと同時に、構内に悲鳴が響いた。
改札を出たあたりで、通行客が足早に逃げていく。

nice!(3)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー