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復讐の結末-4 [デジタルクライシス(シンクロ:同調)]

「あら、生方からだわ。」
剣崎はそう言うと、スマホをスピーカーモードにした。
「剣崎さん、何処ですか?大変です!次の・・次の殺人が、起きています。」
生方の悲鳴のような声に、三人は顔を見合わせた。
「すぐ、戻るわ。」
剣崎は電話を切ると、一樹や亜美とともに、自分のトレーラーハウスへ戻った。
中に入ると、大きなモニター画面に映像が映し出されていた。
「これは?」
剣崎が生方に訊く。
「先ほど、本庁のサイバー犯罪対策室宛てに怪しいメールが届いたそうで、そこにあるURLへアクセスすると、この映像が流れていたんです。」
剣崎たちは映像を見つめる。
病院の手術室のような場所だった。全裸の女性が、手術台の上に横たわっている。手や足は、拘束具できつく縛り付けられていて身動き取れない様子だった。そして、彼女の右手には、注射針が刺さっていて、チューブから血液が流れ出ているのが判る。その横にある心電図モニターは、鼓動の波形を示していて、生きているのだと判った。
チューブを伝って流れ出る先には、ビーカーが置かれていて、出血量が判るようになっていた。すでに目盛り二つほどの出血が確認できた。
「これは?」
剣崎が生方に訊く。
「見ての通り。失血死へのカウントダウンショーです。ちなみに、これはライブ映像なんです。」
「酷い!」
亜美が目を覆う。
「場所は?」
「今、警視庁のサイバーテロ対策室や特殊情報犯罪対策課で調べています。」
「これはきっと、俺たちへの挑戦状だろう。ライブ配信しているのが何よりの証拠。今までは、殺した様子を収めた映像で、場所のヒントを送っていた。今回もきっと同じさ。」
一樹はそう言うと、映像の隅から隅まで食い入るように見る。
「この女性は誰?」
剣崎が生方に訊く。
「判りません‥警視庁のデータベースにはありませんでした。」
「きっとどこかにヒントがあるはず・・。」
一樹はそう呟きながら映像を食い入るように見つめる。
「MMって、女性の整形手術をしていたんでしょ?きっと、ここはその施設よ。」
亜美が思いついたように言った。
「音声は?」
と一樹が生方に言う。生方は慌てて、スピーカーボリュームを上げた。虫の音が聞こえる。遠くで何か大きく響く音がする。
「工場だ。それにこの虫の音。どこかの山中だろうな。」
皆、じっと映像と音声に集中する。沈黙を破るように、生方が叫ぶ。
「特殊情報犯罪対策課からの連絡です。・・・映像の発信元は、静岡東部、おそらく、御殿場付近ではないかとの事です。本庁からも向かっているようです。」
「私たちも向かいましょう。」
剣崎はそう言って、トレーラーを走らせた。
「レイさんにも手伝って貰わなければ・・。」
剣崎はそう言って、亜美にレイへ連絡するように言った。
途中、新東名の浜松サービスエリアでレイと合流する。
「レイさん、彼女の居場所を突き止めたいの。手伝ってもらえるわね?」
剣崎が訊く。レイは小さく頷いて、映像を見つめた。
「御殿場付近らしいんだけど・・どうかしら?」
剣崎が訊く。レイは映像を見つめながら、小さく頷いた。
トレーラーは、新東名を東へ走る。その間も、ライブ映像は続いている。
御殿場に入ると、レイが目を閉じ、映像の女性の、思念波を捕らえようとした。
レイは、両手を広げ、自分の体を思念波を捕らえるためのアンテナの様にしている。
「北の方角です。」
レイが初めて口を開いた。
運転席のカルロスが、ナビを見る。生方もPCでマップを開き、その先を探る。
「この先には、自衛隊の東富士演習場があります。」
生方の言葉で、トレーラーは新東名を降り、須走から富士五湖道路に乗った。
「止まって下さい。」
レイが言う。トレーラーが止まると、レイが西の方角を指差す。そこは、東富士演習場がある場所だった。
「間違いない?」
剣崎がレイに確認する。
「しかし、接続道路がありません。」
PCでマップを確認していた生方が言う。
「いや、林間の道路がすべて記載されているわけじゃない。おそらく、この道路のどこかに、脇道があるはずだ。」
一樹が言うと、カルロスは、ハイビームにして周囲の様子を探る。
「アントニオ、後ろにいるわよね。チームに連絡を。」
剣崎が言うと、スピーカーからアントニオが「イエス」と答えた。
暫くすると、もう1台トレーラーが現れ、後部から、大型のジープを降ろした。
「さあ、行くわよ。」
剣崎は、一樹、亜美、レイを連れ、ジープに乗り込んだ。
「さあ、出発しましょう。」
カルロスがドライバーとなり、富士五湖道路をゆっくりと進む。少し先に、脇道があった。
「そこです。」
レイの言葉にカルロスはハンドルを切る。100メートルほど、草が生い茂る林道を進むと、急に開けて、舗装道路があった。さらに山へ向かって進んでいく。

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