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3-3 初めての経験 [アストラルコントロール]

「いいでしょう。この3人はその覚悟で話を聞きます。良いな、五十嵐!射場さんも良いね。」
山崎が答える。二人は山崎の言葉に頷くしかなかった。
「では、お話しします。私たち3人は、特別な能力を持っています。私はサイコメトリー。触れることで様々な事象を知ることができる。そして、レイさんは思念波・・人が持っている思考を我々は思念波と呼んでいて、それを遠くでもキャッチできる能力を持っている。そして、マリア。彼女は人をを自在に操ることができる能力。マニピュレーターと呼ばれているわ。」
零士たちは初めて聞く話に、もはや思考が停止している状態に近い。
「ただ、私たち3人の力なんて小さいものなの。それらを凌ぐ能力を持つ人がいる。思念だけの存在。判りやすく言えば、魂だけで永遠の存在。今は、彼女の体の中にいるわ。」
剣崎は手短に話した。
「先ほど、零士さんと握手をしたとき、私のサイコメトリーとレイさんのシンクロで、あなたの中を見たのよ。でも、アストラル能力は見つからなかった。でも、その残骸のようなものを感じたわ。」
「残骸?」と零士。
「ええ、残りかすみたいなものね。誰かが一時的にあなたの中に入り込んで、あなたの意識を飛ばしたみたいね。」
剣崎はこともなげに話す。
「そんな馬鹿な・・。」
零士には意味が分からなかった。
「問題は、その能力を持つ人間がどうしてあなたに入り込んで、事件現場につれていったのか。それ以前に、事件が起こることをどうして予見できたのかなのよ。」
「ちょっと待ってくれ。いきなりいろんな事を聞いて理解が追い付かない。大体、そんな特殊な能力というのは本当にあるのか?」
山崎が口をはさんだ。
「仕方ないわね。じゃあ、ちょっと体験してもらおうかしら。・・今から、あなたたちの意識の中に入り込むわね。覚悟して。」
剣崎はそう言うと、山崎の手を握る。山崎の頭の中に剣崎がいる。話をする声ではなくダイレクトに頭の中で剣崎が『判る?』と告げている。
同時に、レイが五十嵐の頭の中に入り込む。思考を乗っ取られたような感覚だった。
零士には、マリアが入り込む。マリアは零士の体を乗っ取り、立ち上がり、逆立ちをして歩いた。零士はそんなことができるはずもなく、自分が動いているという感覚さえなかった。
「わかったかしら?」
剣崎の声で3人は意識が戻った。
五十嵐は震えている。今まで経験したことのない感覚。彼女たちの能力に対して急に恐怖がわいてきたのだった。
「わかったでしょ?こんな力を悪に使えば恐ろしいことが起きる。だから、私たちの存在は知られてはいけないの。」
零士たちは頷いた。
「話を戻すわね。こんな特殊な能力を持つ者を特殊犯罪捜査課では絶えず発見し監視している。それが、最近になって、急に活発に動くようになってきたの。」
「活発に?」と山崎が訊く。
「ええ、詳しくは話せないけど、アメリカの特殊機関が世界中に私たちのような人間を派遣していた。その組織は壊滅したんだけど、残党がいるの。日本にもいる。今回の射場さんはそのひとつではないかと考えているわけ。」
「一体何をしようとしているんですか?」と零士が訊く。
「今はまだわからない。大きな事件になる前に何としても食い止めなければならないわ。だから、協力してほしいの。あなたがどういう行動をしてアストラルコントロールされているか。きっとあなたの身近にいる人間の仕業にちがいないのよ。」
剣崎は零士の目を見て言った。
「協力しないと言っても、あなたたちの力があれば僕を操ることは簡単じゃないですか?」
零士はやや批判的な口調で答えた。
剣崎はにこりとして言った。
「貴方はかなり優秀ね。そう、拒否すれば我々があなたを操る。そして、真相を見つけるだけなんだけど・・それじゃあ、あなたの尊厳は守れないでしょ?」
もうすべての筋書きが決まっているような口ぶりだった。

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