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火葬の女性-7 [デジタルクライシス(シンクロ:同調)]

生方は先程の映像を全て録画していて、パソコン画面部分を切り出して詳細に調べ始めた。
「どういう事かしら?」
映像を見ていた剣崎が呟く。
「どこからか指示が来て、女の子を選んだってところでしょうね。」
と、一樹が答えると、剣崎はちらりと一樹を見て、『そんなことは判っている』と言いたげな表情を浮かべた。
「短いメール、それも記号と数字の件名だけ。まるで暗号。余計な文章もなかった。仮に洩れたとしても何のことだか判らない。・・という事は、秘密にしなければならないような事を組織だって行っているということね。・・さっきの写真の女の子のうち、Cに該当する女の子を館に呼びに行ったということでしょう。」
剣崎は、独り言のように呟く。
「秘密クラブと関わりがあるんじゃないでしょうか?」と亜美が言う。
「秘密クラブ?・・いや、そんなものじゃないだろう。」と一樹。
「そうね。人体実験とか変質者が客と考えた方が自然でしょう。穴を掘るって言っていたところから、おそらく、死体を引き取りに行き、替え玉を置いてくる。そんなところじゃないかしら?」
と、剣崎が続けた。
「そんな・・恐ろしい事を?」
と、亜美は信じられないという表情で剣崎を見る。
三人の会話に、生方が割って入った。
「先ほどの映像からいくつか判りました。」
「報告して!」と剣崎。
「まず、メールの送信者ですが・・名古屋のNY物産という会社の藤原という人物でした。アカウントだけですから、本名かどうかは判りませんが・・それから、3人のファイルですが、写真と体のサイズ、年齢などが入っていました。皆、身長160センチから170センチ、体重45㎏前後で、ロングヘアでした。あの、暗号のようなものは女性の特徴でした。おそらくその特徴に近い女性をピックアップして返信し、Cの女性が気に入ったという事ではないでしょうか?」
「女性の身元は?」と剣崎。
「行方不明者リストと照合したところ、Cの女性は、片淵亜里沙と判明しました。4年前に行方不明で家族から捜索願が出されていました。あとの二人は今照合中ですが、いずれも、行方不明者や失踪者でしょう。」
生方が得意げに返答した。
「失踪者や家出人を集めているってことか?」
一樹が呟く。
生方が報告を終えた時、映像を見ていた亜美が「あ、出てきました。」と言った。
モニターには、片淵亜里沙と思われる女性が、ブラウス姿で部屋から出てきたのが映っている。
「支度は整ったみたいね。私たちも後を追いましょう。」
剣崎はそう言うとトレーラーから出た。いつ用意したのか、外には大型のバンが停まっていた。すでに、運転席にはカルロスが待っていた。
剣崎、一樹、亜美、そしてレイもバンに乗り込んだ。
バンの運転席の横には幾つかのモニターが置かれていて、その中央には大型のナビシステムが据え付けられている。
「上手く拾ってくれると良いんだが・・。」
カルロスは画面を注視している。赤い光が点滅した。ちょうど、屋敷の門辺りを動いている。
「剣崎さん、上手く行きました。追跡します。」
カルロスはバンを動かす。
「1KM以内に居れば大丈夫。」
カルロスはそう言って、車を進める。
赤い点滅は、土山インターチェンジから新名神高速道路に入った。カルロスは少し離れて追っていく。四日市ジャンクションで湾岸道路へ入り、豊田ジャンクションから、名古屋方面へ向かう。
そして、名古屋ジャンクションを降りると、東へ向かって進む。名古屋市の郊外にある高層マンション群に入っていく。
剣崎のバンに生方から連絡が入った。
『この近くに、グランドレジデンス宝山というマンションがあります。そこに、NY物産所有の部屋が見つかりました。1501号室です。』
それを聞いて、剣崎はカルロスに向かうように行った。
赤い点滅は、手前のファミレスで停まっている。目的地に行く前に腹ごしらえでもするつもりなのだろう。
剣崎は先回りして、グランドレジデンス宝山に到着すると、車を降りた。
地上20階建ての高級マンションだった。玄関を覗くと、コンシェルジュの姿が確認できる。当然、セキュリティは強固だと推察できた。
「入り込むのは難しそうですね。」
と、一樹が、少し諦め気味に言った。
「すでに、殺人は起きてしまっている。それより、黒服の男達が何をしているかが重要よ。暫く、待ちましょう。」
剣崎は、玄関の見える場所を探し、身を隠した。
暫くすると、黒服の男達の車が見えた。車は、地下駐車場に入っていく。
「行くわよ。」
剣崎たちは、連絡通路からマンション地下駐車場に入り、エレベーターが見える場所を探して、身を潜める。
黒服の男二人が、片淵亜里沙を連れて、エレベーターの前に立つ。
エレベーターにはセキュリティシステムがついていて、部屋番号で呼び出しているようだった。
一樹が単眼望遠鏡を使って、画面の数字を読む。
「1501・・間違いない。」
エレベーターのドアが開き、男達と片淵亜里沙が乗り込んでいった。

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