SSブログ

3-12 次の容疑者 [アストラルコントロール]

五十嵐達は、いったん署に戻り、加茂正氏への事情聴取について報告した。
「念のため、預かったメモリーカードを見てみます。」
林田はそう言って、メモリーカードを五十嵐から預かり、パソコンを開いた。
「正氏の話からすると、犯人は正氏を犯人に仕立てるために、あの鉈を使ったということですね。」
五十嵐が山崎に言う。
「まあ、そういう小細工をしたと言えるんだが・・。」
山崎は何かこの事件にはもっと深い闇があるように感じていた。
「加茂氏親子に恨みを持つ人間ということでしょうか?」と五十嵐。
「その可能性が高い。もう少し、加茂親子の近況を調べておく必要があるな。」
「ええ、射場さんが夢で見た男はためらいもなく一撃で善三氏を殺していました。かなり計画的に事を進めたのは間違いないでしょうね。加茂氏親子に関する情報を集めてみます。」
五十嵐がそう答えたとき、パソコンを睨みつけるように見ていた林田が声を上げた。
「山崎さん、これを見てください!」
林田はパソコンを抱えて、山崎のところに来た。
「正氏は、確かに、迎えに来た結城の車に特に慌てる様子もなく乗り込んでいました。しかし、その後です。」
林田はそう言うと、映像を少し進めた。
「ここです。」
ドライブレコーダーが映している画面の中に人影が動いているように見えた。
「誰かいるようだな。」と山崎。
「ええ・・ちょっと映像を拡大します。」
林田が起用にマウスを使って問題の映像を拡大し、フィルターをかけて映っている人影を際立たせたあと、映像を再生する。
確かに、暗闇の中、ぼんやりと照らす月明りに浮かんで、人影があった。そして、その人物はひょいと通りを渡り、加茂氏の邸宅の門前に立った。それから、周囲を何度も見回してから、門の中に入っていった。その後、結城氏の運転する車は発進し、該当の場所は映っていなかった。
「加茂正氏が帰った後、誰かが忍び込んでいる・・ということでしょうか?」
林田が山崎に確認する。山崎はチラッと五十嵐を見た。その視線は、この人物は犯人ではないと聞きたげだった。
「正氏が善三氏と口論になり怒って家を出たというのを信用するなら、この男が、善三氏を殺害した可能性が高い。・・そうですよね。」
林田は、犯人を見つけたと躍起になって話す。
「誰なんでしょう?」
林田が訊いた。
すると、武藤が事件の詳細が書かれたホワイトボードに視線を向けて、関係者の写真を見る。
「たぶん、こいつだろう。」
指さしたのは、交通事故の被害者の夫、伊藤順次だった。
「正氏も、結城氏も、こいつに脅迫されていたと話していたんだろ?きっと、金をせびりに言って相手にされず、鉈で殺した。そういうことじゃないか?」
「まあ、物証的にはそういう可能性も考えられるが・・。」と山崎が答える。
「どうしたんです?山崎さんらしくないですね。いつもなら、すぐにこいつを引っ張ってこいっていうところでしょう。」
武藤は少し釈然としない様子で山崎に言った。
「ここに映っているからと殺した証拠にはならないということだ。」と山崎。
「そうですが・・とりあえず、こいつを調べてみましょう。」
すぐに、武藤と林田が、交通事故被害者の夫、伊藤順次のアパートに向かった。
自宅であるアパートは留守だった。
隣の住人から、近くの雀荘ではないかと聞き、向かうと、情報の通り、伊藤順次は麻雀荘の一番奥の席にいた。羽振りのよさそうな男たちと卓を囲んで上機嫌だった。
林田が先に入り、伊藤に声をかける。
「伊藤順次さんですね。」
「はあ?お前、誰だ?」

nice!(3)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー