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3-24 石塚麗華 [アストラルコントロール]

五十嵐のスマホが鳴った。山崎からだった。
「石塚麗華の居場所が判った。すぐに向かってくれ!」
話は途中だったが、まずは今回の事件の犯人逮捕が優先だった。
結城氏が、石塚麗華のスマホの番号を知っていて、彼女の居場所(正確にはスマホのありか)を見つけたのだった。
石塚麗華は、相模湖畔に停めた車の中にいた。
「結城が逮捕されるはずだったんじゃないの!」
石塚麗華は強い口調でスマホでしゃべっている。相手が何かを言ったようだが取り合おうとはしなかった。
「何とかしなさいよ!」とさらに語気が強まる。
相手が何か言ったようで、すぐにスマホを切った。
「どうしよう・・このままじゃ捕まるのは時間の問題・・。」
「逃げよう!」
運転席にいた若い男が言う。
「逃げるって言っても、どこへ?」
「わからないけど・・とにかく、遠くへ・・。」
「馬鹿じゃないの。逃げれば、自分が犯人ですって言ってるのと同じでしょ?」
「じゃあ、どうする?俺、もう二人も殺したんだ・・捕まったら死刑になる・・いやだよ。」
「そうね・・あなたは二人殺したのよね・・。」
石塚麗華はわずかに笑みを浮かべている。
「おい、お前が結城に罪を被せられるからっていうからやったんだぞ。」
「そうよ。誰かが罪を被れば良いのよ。」とさらに不敵な笑みを浮かべている。
遠くでパトカーのサイレンが聞こえた。
石塚麗華は、車のダッシュボードを開ける。そこに小さなナイフが入っていた。それを取り出す。
「どうするつもりだ?」と、男は不審そうに見た。
石塚麗華は、それを男に手渡した。そして、いきなり自分の腕をそのナイフに突き刺す。
赤い血が飛び散る。
「やめろ!」と男は叫ぶ。
だが、石塚麗華はさらにナイフに身を当てる。来ていたワンピースが赤く染まる。
そして、ドアを開けて走り出した。何度も転び、泥だらけになる。靴も脱げ、ぼろぼろの状態で、湖の周回道路に出て倒れた。
そこに、パトカーが到着した。
山崎から連絡を受けた地元の駐在所から来た警官だった。道路に倒れている女性を発見すると、すぐに駆け寄った。
「大丈夫ですか!」
警官が倒れた石塚麗華を抱えて起き上がらせる。血に染まったワンピースを見て、警官も慌てた。
「本部、本部!女性を発見。出血しています。」
すぐに救急車が出動する。もう一人の警官が周囲を確認し、駐車場に止まっている不審車両を発見した。その車両から、血痕が点々と続いている。
「女性を刺した犯人の車両を発見しました!男性が乗車している模様です。」
そこへ、五十嵐が到着した。その後を、剣崎たちのトレーラーが続いた。
警官と五十嵐が、駐車している車両へゆっくりと近づく。逃走する様子はない。
そっと、窓から中を確認する。男性が首筋から血を流していた。手元にはナイフが握られていた。
救急車が到着し、石塚麗華を病院へ連れて行った。
すぐに鑑識がやってきて現場検証を始めた。
山崎や武藤たちも鑑識班と一緒にやってきた。
「鑑識の調べた範囲では、自殺の可能性が高いということです。握っていたナイフから彼女の血が検出されたため、石塚麗華を刺した後に自ら首筋を切って自殺したと思われます。」
五十嵐が山崎に報告した。
「事件の発覚を覚悟し、無理心中を図ったというところか?彼女はどうした?」
「さっき、運ばれた病院に行った林田から、命に別状はないとのことでした。腕と胸の2か所に傷があったそうです。まだ、話は聞けない様子でした。」
武藤が報告した。

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