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FINAL3 人質 [アストラルコントロール]

「レイさん!ここにいてね。」
剣崎はそう言うと店を飛び出した。
剣崎は、逃げてくる客たちを掻き分けるようにして進む。ふっと人波が切れた。目の前に、背広姿の男が全身に血を浴びて立っている。右手には、ナイフのようなものを持っている。左手で若い女性の首を締める形で周囲を威嚇する。視点が定まらないような目をして、肩で息をしている。時折、手にしたナイフを振り回している。
まもなく、鉄道警察官がやってきた。少し遅れて、駅前の交番から警察官が姿を見せた。男を取り囲
「やめなさい!もう逃げられない!抵抗は止めなさい!」
警官が叫ぶ。警官がじりじりと男に近づこうとすると、男は羽交い絞めにしている女性の首筋にナイフを当てる。さらに近づこうとすると、ナイフが首筋に傷をつけ、女性の悲鳴があがる。
剣崎はじっと成り行きを見ながら、周囲に、スパイダーの姿がないか、確認する。
レイが店から出てきて、剣崎の隣に立った。
「剣崎さん、プラットホームで、県会議員が倒れているようです。わき腹を刺されていますが致命傷ではなさそうです。・・あの男がやったんです。彼が、小松原雄一です。」
剣崎も状況からおおよそ予想はついていた。
しばらく、小松原雄一と警官のにらみ合いが続く。
まもなく、山崎たちが現場に現れた。
山崎は現場に剣崎の姿を確認したことで、この事件はスパイダーというサイキックの仕業だとすぐに分かった。
緊張状態が続いている。人質となった女性は化粧がボロボロになるほど泣き続けている。
山崎が剣崎のところへやってきた。
「時間の問題だ。いずれ、あいつの精神力が切れて隙が生まれる。そこが勝負だ。」
山崎は剣崎たちに小声で話しかけた。
「いえ・・今、彼はスパイダーに操られている。普通の状態じゃない。きっと、彼は、あの女性の首を裂き、自分の首も切って果てるわ。最悪の結果になるはず。」
剣崎の冷静な言葉に、山崎は驚いた。
「止める方法はないのか?」と山崎。
「スパイダーを捕らえる以外ないわ。ただ、気づかれれば、一気に彼を殺してしまう。慎重に動かなければすべてが終わってしまうわ。」
剣崎の言葉に山崎は困惑した。
「近くにいるのか?」
「いえ、周囲には居ないわ。どこか離れたところから・・そうね、思念波が届く距離・・彼の場合どれくらいかは判らないけど、さっき、レイさんが彼の思念波を捉えたから、それほど遠くではないでしょうけど・・。今、スパイダーは射場さんの体を使っている。射場さんを見つけることね。」
少し遅れて、カルロスとともにマリアが来た。
『剣崎さん、私に任せてください。』
マリアは剣崎の手を取って、思念波で伝えた。
剣崎は驚いてマリアを見た。そして、レイの顔を見る。
『私が彼の周りに思念波のバリアを作ります。短い時間でも彼を操っているスパイダーの支援波を切ることはできます。その間に、彼を抑えられれば・・。』とマリア。
『伊尾木さんのアイデアね。』と剣崎。
『マリアがバリアを張れば、スパイダーが次の動きを示すでしょう。その時、彼の居場所を見つけられるかもしれません。』
今後はレイが言った。
「山崎さん、この後、短時間、彼のマニピュレートを遮断します。一時的に彼が動けなくなるはずです。その一瞬のうちに、彼を制圧できますか?」
剣崎が山崎に提案する。
「よく判らんが、彼が動けなくなる隙に抑え込めばいいんだな。良いだろう。やってみよう。」
山崎はそう言うと、にらみ合いを続けている、計画と小松原雄一の間に歩み出た。そして、両手を挙げて小松原に近づく。・
「落ち着け!もう逃げ場などない。おとなしく彼女を解放するんだ!」
山崎はじりじりと小松原に近づく。小松原が手にしたナイフを突き出して叫ぶ。
「近寄るな!」

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