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3-25 迫る [アストラルコントロール]

近くに停めたトレーラーの中から、剣崎やレイ、マリアたちが様子を見守っていた。
「罪をすべて、彼に押し付けるということね。」
剣崎が呟く。
剣崎たちは、シンクロで五十嵐から事情を知ることができた。
「石塚麗華はこうなることまで指南されていたんでしょうか?」と、レイが言う。
「どうでしょう。彼が自殺することまで想定はしていなかったんじゃないかしら。一度、戻って、彼に確認しましょう。車を出して。」
剣崎が言うと、トレーラーが動き始めた。山崎と五十嵐はちらりとそれを見た。
『先に戻るわ。この事件の真相はあとでお話ししますね。』
レイが五十嵐と山崎に思念波で伝えた。
五十嵐と山崎は顔を見合わせ、ちょっと複雑な表情をした。
「まずは男の身元だな・・。」
「所持していた免許証から、名前は三上和也。25歳。住所は、横浜ですね。」
武藤が報告する。
「署に戻るか・・。」
山崎たちは署に戻り、刑事課の会議室に集まった。
会議室のホワイトボードには、加茂善三・加茂正・結城徹・石塚麗華・三上和也の写真と関係図、それぞれの事件が時系列に書かれていた。
五十嵐が皆の前で経過を整理しながら確認していく。
「死んでいた三上という男は何者だ?」と山崎。
「署のデータベースですぐにわかりました。以前、一度、交通事故で検挙されていました。その事故で職を失い、夜の仕事・・いわゆるホストの仕事に就いていました。あまり売れている様子はなかったようですが・・。」と林田が答えた。
「石塚麗華との関係はどうだ?」と山崎が言うと、再び、林田が答えた。
「石塚麗華と三上和也は、大学時代からの知り合いで、一時、同棲していたようです。ただ、石塚麗華は、三上以外にも何人か交際相手がいて、加茂正もその一人だったようです。大学時代の知人の何人かから情報を得たところ、彼女は男性に貢がせる能力に長けていたようで、トラブルも多かったとのことでした。ホストだった三上とはおそらく店で再会したんでしょう。ただ、ホストのくせに、石塚麗華に相当貢いでいたという情報もありました。」
「恐ろしい女だな・・。」と武藤が呟く。
「結城氏によれば、石塚麗華は正氏と肉体関係を持ったことをネタに事務所に入り、おそらく、小遣いももらっていた。しかし、それでは満足できず事務所の金に手を付けたことが発覚して解雇された。それが、一連の殺害の動機ということになる・・だが・・・」
山崎がホワイトボードを見ながら言った。
「ええ、横領や脅迫の証拠はありますが、殺害を命じた証拠がないんです。実行犯だったのは三上。死んでしまったため、石塚麗華に命じられたという証言は取れません。このままでは、二人の殺害の容疑者は三上で、死亡のまま送検という決着になります。三上が実行犯だという、確たる証拠もありませんから、起訴できるかも・・。石塚麗華は、横領や脅迫で起訴はできるでしょうが、それも。」
五十嵐が残念そうに言う。
「計画し、命令した首謀者は罪に問われずということか・・。」と山崎。
会議室は沈黙した。
「彼女の自白が頼りというわけか・・・今回は少し厄介だな。」
「したたかな女のようですし、三上に刺された被害者ということを前面に、三上に脅されていたというかもしれませんし・・。」と林田が言う。
山崎がちらりと五十嵐を見た。
前回の事件のように、射場零士が自白を引き出す方法を見つけているのではないかという期待の視線だと五十嵐は受け止めた。
「もう少し捜査を続ける。とにかく、石塚麗華が三上を操っていたという証拠を見つけるんだ。」
武藤も林田も、部屋を出て行った。
「射場さんはどうしている?」と山崎が五十嵐に訊く。やはりそうかと五十嵐は思った。
「様子を見てきます。」
五十嵐も部屋を出て行った。
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