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エピローグ [アストラルコントロール]

小松原雄一が起こした事件は、傷害罪・殺人未遂罪などで裁かれることとなった。
同時に、繁華街での傷害事件捏造に関して捜査が進められ、父親の県会議員による収賄事件も明るみに出ることになった。

剣崎たちが、橋川市へ戻る日になった。
射場、五十嵐、山崎の3人が、剣崎のトレーラーハウスへやってきた。
山崎は、一連の事件について何か言うべきだと思いつつも、すでに彼女たちに見透かされているのではと思い、ただ礼を言うにとどまった。
射場零士は、アストラルされたことを発端に経験したすべての記憶を書き綴ってみたものの、読み返してみると、陳腐なSF小説のようにしか思えず、とりあえず封印することにした。
「あの日以来、時折、頭の中で何か強い波動のようなものを感じることがあるんです。」
少し心配げに射場が言った。
「それはきっと、彼らからの置き土産ね。悪用すれば命に関わるかもね。」
剣崎から、脅すような言葉を返され、困惑した。
「そういう時は、真っ先に五十嵐さんに伝えなさい。何かの事件かもしれないわ。それでも困ったら、私に連絡してね。」
剣崎は笑顔で言った。
「五十嵐さん、いろいろとありがとう。射場さんに何か異常があったら連絡してね。」
五十嵐にレイが冗談めいて言った。
「ええ、大丈夫です。四六時中見張っていますから・・。」
「四六時中って?」
「はい。今日から、私たち一緒に暮らすことにしたんです。」
五十嵐が顔を赤らめて嬉しそうに言った。
五十嵐と射場の関係はあの日以来かなり深まっていて、五十嵐のマンションで一緒に暮らすことになっていたのだった。
「山崎さん、今回のことはすべて封印してくださいね。まあ、話したとしても、信じてくれるような人はいないでしょうけど。」
剣崎がくぎを刺すように言った。
「ああ、もちろん、そのつもりだ。後始末は何とかするよ。」
「よろしく!・・さあ、カルロス、帰るわよ!」
剣崎の号令でトレーラーが動き始めた。

帰りの車中、レイは少し憂鬱な表情を浮かべていた。
レイは、サイキックとしてはかなり高いレベルの能力を持っている。伊尾木やスパイダーと比べても遜色ないレベルだった。いずれ、自分たちも、彼らのような思念波だけの存在になりはしないか、そうならない方法はあるのだろうか、ぼんやりとそんなことを考えては気分が塞いでいたのだった。
マリアは、最愛の「おじさん」の存在を失って、少し不安定になっていた。自らを生み出してくれた存在であり、拠り所でもあった。目の前で消えてしまった現実をいまだに信じたくない気分でいた。
『ちょっと、二人とも暗いわよ!』
剣崎が思念波で語りかける。
『大丈夫。私たち3人、一緒にいればきっと大丈夫。それに、橋川には、あの、愉快な人たちが待ってるでしょ?大丈夫。きっと大丈夫よ。』
トレーラーの窓から外を見ると、太平洋が広がっていた。

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