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4-2 情報から [アストラルコントロール]

トレーラーハウスに、山崎と五十嵐、そして射場零士が呼ばれた。
「これからお話しすることをすぐには理解できないかもしれませんが、このままでは、同じような犯行が増えるのは確かです。ご協力ください。」
剣崎がいつもと違い丁寧に話をする。
それから、三つの事件の概要を見ながら、その構図を説明した。
「これらの事件には、ある人物が深くかかわっていることが判っています。」
そういうと、ディスプレイに喫茶店の席に座る男の映像が映し出された。
「これは、DREAMのマスターの記憶を映像にしたものです。証拠能力はありませんが、皆さんに理解いただくために作成しました。」
その男は、帽子を目深にかぶり、俯いてパソコン画面を見ている。
「何者なんだ?」と山崎が訊く。
「この人物を探し出してもらいたいのです。この男が、三つの事件の影の首謀者です。殺害の実行犯に事件を起こすためのシナリオを提供し、実行させたのです。おそらくネット経由で情報提供していると考えられます。」
剣崎が説明すると、五十嵐が言う。
「私たちも、事件の背景を調べましたが、石塚麗華のパソコンやスマホには、三上以外の人物との通信履歴はありませんでした。本田幸子、桧山雄一郎も同様でした。」
「あらそうなの・・きっと、通信記録が消える細工をしているんでしょうね。・・じゃあ、喫茶DREAM周辺の防犯カメラの記録から調べるしかないわね。」
剣崎はそう言うと、にやりと笑って、「生方!」と叫んだ。
「聞こえてますよ。剣崎さん、もうあなたの部下じゃないんですよ。そんな簡単に呼び出さないでくださいよ。」
モニターから聞こえたのは、かつて剣崎の部下だった生方だった。
特殊捜査課で情報分析の担当だったが、現在は、特殊犯罪捜査課の特別官になっていた。
「言われた通り、DREAMは、特殊犯罪捜査課の捜査員も立ち寄っていたようです。実は、今回とよく似た事件が都内でも発生していて、捜査の一環だったようですが・・。」
「特殊犯罪対策課はどこまで捜査が進んでいるの?」と剣崎。
「いえ、DREAMには行ったようですが、何も掴めていませんでした。やはり、これは、剣崎さんたちが言う通り、サイキックによる犯行ではないかと思います。」
「生方、そんなことはわかってるのよ。それより、映像の男は?」
と少し剣崎は苛立った言い方をした。
「画像をもとに、男の行動の痕跡を探っています。今、AIが、周辺の監視カメラ映像から、同一人物をピックアップして、行動パターンの解析をしているところです。」
「そう・・早めにお願いね。」
「了解。」
目の前で進んでいることに、山崎や五十嵐、そして射場は少し追い付いていない様子だった。
「この人物が今回の一連の事件を操っているのだけど・・手口や動機が全くわからない。特殊能力を使うのなら、こんなまどろっこしいことをしなくてもいいはずなのに・・。」
剣崎は、呆れた顔をしていった。
「あの・・」と五十嵐が口を開く。
「本当にそんな・・サイキックと呼ばれるような人なんでしょうか?人を操って事件を起こさせるということは、過去にもあります。お金だったり脅迫だったり・・三つの事件もあまり共通性も感じられない。思い過ごしじゃないんでしょうか?」
「そうじゃないんです。」と、DREAMのマスターが口を開く。
「これは、悪意を・・いえ、殺害を望んだ悪人を懲らしめるためなんです。だから、全て、犯人がぼろを出して逮捕された。そうやって、悪を懲らしめている・・そういう構図だと思うんです。」
「悪を懲らしめるため?それは警察の仕事です。それに、悪を懲らしめるのなら、殺人を起こさせない方が良いはずでしょう?未遂に留めて・・」
と五十嵐は少し不満そうに言いながらも、このさきは警察官が口にすべきことではないと気付いて止めた。
「確かにそうなんでしょうが・・。それでは懲らしめにはならないのではないでしょうか?」
とマスターが反論する。
「事件の話に戻りましょう。」
剣崎が二人を止めた。

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