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4-6 逃走 [アストラルコントロール]

『全てが推論に過ぎないが、そう考えれば、辻褄があるだろう。』
「マスターに直接確かめるしかなさそうね。」
剣崎はレイやマリアとともに、喫茶DREAMを訪れた。
ドアを開けると、「いらっしゃい」と声が響いた。マスターはカウンターの向こう側で洗い物でもしている様子だった。
「どうぞ、お好きなところへ。」
マスターの応対は妙だった。とりあえず3人は、奥の席へ座った。
マスターは、剣崎たちとは初対面の様子で、トレイに、グラスを乗せ水を入れて運んでくる。マスターはゆっくりとグラスをテーブルに置き、「ご注文は?」と尋ねた。
「マスター?」
レイが訊く。
「はい・・なんでしょう?」
その瞬間、レイはマスターの思念波にシンクロした。
「いえ、ああ、コーヒー二つとオレンジジュースをお願いします。」
「はい判りました。」
マスターはそう言うとカウンターの向こうに入っていった。
『彼はスパイダーではないわ。』
レイが思念波で、剣崎とマリアに伝えた。
「そのようね。」
『スパイダーは、私と同じ、思念波だけの存在だ。もう、誰かの体に入ってしまっているのだろう。』
マリアの中の伊尾木が皆に伝える。
「私たちが彼の正体に気づいたことが判って逃げたのかしら?」
レイが言うと剣崎が
「逃げたのならまだいいのかも。それより、次のターゲットを見つけたのかもしれない。また、殺人事件が起きるかもしれないわ。」
剣崎が言う。
そこに、マスターがコーヒーとオレンジジュースを運んできた。温和な表情だった。
「あのマスター、私たちのこと、覚えていませんか?」
レイはあえて訊いてみた。
「いや、申し訳ないんだが・・実は、ここ数年の記憶が曖昧なんですよ。ただ、この店でコーヒーを淹れていたことは覚えているんですが・・このあと、医者に行こうかと・・認知症かも・・。」
マスターはレイの質問にかなり不安そうな表情を浮かべて答えた。その口調や声は、以前とは全く別人だった。
3人は店を出た。
「一体、どこへ消えたんだろ?」と剣崎が言うと、レイが目を閉じ集中する。
「この近くには彼の思念波は感じられないわ。・・どこか遠くに逃げてしまったのかしら?」
レイが目を開けて言った。
『いや、奴は、レイさんが思念波で探し出すことを予見して、バリアを張っているに違いない。奴を探すのは難しいかもしれないな』と伊尾木が思念波で伝えた。
「五十嵐さんに連絡した方が良いわね。」
剣崎はそう言うと、スマホを取り出し、五十嵐に連絡した。
3人がトレーラーハウスに戻るのと同時に、五十嵐がやってきた。
トレーラーハウスの中に入り、剣崎は、これまで皆で推理した内容を伝え、マスター、いやスパイダーの所在を突き止めなければならないと伝えた。
「まだ、十分に理解したわけではありませんが、そのスパイダーと呼ばれた人物こそ、今回の一連の事件の首謀者なんですね。」
と、五十嵐が再確認するように訊いた。
「ええ、でも、何の証拠もないわ。サイキックである私たちには確信を持てる内容だけど、おそらく、犯罪として立証するのは無理でしょうね。」
剣崎が少しあきらめ気味に言った。
「いえ、犯罪者は犯罪者です。彼自身に証拠がなくても、これまでに逮捕した3人とスパイダーの繋がりが見つかればいいはずです。きっと何かあるはずです。」
五十嵐は強気に言った。

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