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4-7 破壊 [アストラルコントロール]

「例えば、最初の事件・・本田幸子が実際に殺人を犯したわけですが・・そこに至るまで、事務所の社長夫妻が大きく関与していたはずなんです。実際、あの後、姿をくらませています。真相を知っている、彼らを見つければ、スパイダーとの繋がりが見つかるかもしれません。」
五十嵐が思い付いたように言った。
「そのことなんですが・・」
突然スピーカーから声が響く。生方が割り込んできた。
「何なの?」と剣崎が少し鬱陶しいと言いたげな返答をする。
「剣崎さん、五十嵐さん、実は、こちらでも独自に、あの社長夫婦を探していたんですよ。」
「それで?」と剣崎。
「二人とも、入院していました。」
「入院?」と剣崎。
「ええ、山梨の精神科の病院です。」
「精神科?」
「ええ、山中湖のコテージで、意識不明の状態で発見され、入院となったようです。調べた限り、精神に異常をきたしていて、回復は無理ということでした。」
『彼の仕業に違いない』
マリアの中にいる伊尾木が思念波で伝える。
「強力な思念波を使って彼らの意識を破壊したのね。」と剣崎が言う。
「やはり、スパイダーが関与しているのは確実ね。・・もう、彼と事件をつなぐ証拠はないわ。」
剣崎の言葉に応えるようにレイが言う。
「もしそうなら、これまで事件に関与した人間も同様に廃人にされるんじゃないでしょうか?」
「3人は拘置所にいるんです。廃人になんてできないでしょう。」
と五十嵐が答えると、生方が思念波で答えた。
『何処に居ようが問題ない。奴は、今、思念波だけの存在。物理的な障壁は無意味だ。すでに、着手しているだろう。奴を止めるのは、普通の人間では無理だ。』
伊尾木の言葉に皆が一気に危機感を高めた。
「一刻も早く、彼を見つけて止めなければ・・。」とレイが言う。
「一体、どこに行ったのかしら?」と剣崎が言う。
『思念波だけでは長くは存在できない。きっと、誰か、シンクロしやすい人物の体に入り込んでいるはずだ。その人物を見つけることだ。』と伊尾木が思念波で話す。
しばらく沈黙したが、みんな、ほぼ同時に同じ人物にたどり着いた。
「射場さん・・じゃないかしら?」
レイが五十嵐を見ながら口を開く。
五十嵐自身も、そうではないかと考えていたが、改めて、レイに言われて強い不安に包まれた。
「何度も、アストラルコントロールを受けたことを考えると、その可能性が最も高いでしょうね。」
剣崎も言う。
五十嵐の不安はさらに強まっていく。
「体に入り込まれたら・・零士さんは・・どうなるんでしょう・・。」
五十嵐が、絞り出すように訊いた。
『射場の思念波が強力であれば、おそらく、思念波のぶつかり合いが起きるだろう。それはかなりの消耗戦であり、おそらく、射場零士の思念波は消えてしまう。そして、最終的に体は完全に乗っ取られてしまうだろう。」
「そんな・・。」と五十嵐が蹲る。
『抵抗せず、奴を受け入れたとしても、同じことだ。射場の思念波は思念波で作られた繭の中に閉じ込められてしまう。結果は同じだ。』
「じゃあ、もう乗っ取られたということじゃ・・。」と剣崎が伊尾木に訊く。
「いえ、大丈夫です。」
今度はレイが口を開いた。
「まだ、はっきりと彼の思念波を感じることができます。今ならまだ・・。」
それを聞くと同時に、五十嵐はトレーラーハウスを飛び出していった。
「私たちも行きましょう。」
剣崎はみなを連れて、五十嵐の後を追った。

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